藤井製作所プレス加工一貫生産・樹脂成形・両技術の融合
株式会社 藤井製作所

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押出トラブル集

Ⅰ.押出成形のトラブルと対策

①スパイダーマーク (spider mark)

ダイのマンドレル(心棒)を固定し支持するための部品をスパイダーと呼びパイプやチューブなどのダイに設備されることが多い。
その形状が蜘蛛に似ているためそう呼ばれる。
溶融状態の材料がそのダイの内部を通過するとその形の跡が製品に縞状になって残ることがある。
これがスパイダーマークである。

解決策→

ダイランドを十分長く取り、マンドレルの一部を膨らます。チョーカーリングの取付も効果的である。

②フィッシュ・アイ (fish eye)

製品の一部に生じる小さな球状の塊。魚の目のような透明性を持つものが多いことからこの名で呼ばれる。
発生はPVCのみならずポリエチレン、ポリプロピレンなどにもみられる現象であり、発生原因は種々の説明がある。
例えばPVCのフィッシュ・アイの生成原因としては次の点が挙げられる。

  1. ゴミ・繊維屑などの混入-ゴミが核となり結晶化を起こす
  2. 異なった高重合度のPVCが混入
  3. 細粒PVCと粗粒PVCとの混入
  4. 可塑化PVC化と生のPVCとの混入
  5. 可塑剤の吸収しにくい緻密なレジンの混入
  6. 混錬の不均一及び不充分
  7. 押出成形機のアダプター部の温度が低すぎて局部的に固化した材料が剥げ落ちる
  8. 押出成形時の内圧不足-スクリューの構造が悪い

③メルトフラクチャー (melt fracture)

押出速度を著しく大きくした場合に、成形表面に不規則な凹凸が生じたり、あるいは竹の節状、スパイラル状の流出物が発生することがある。
ダイオリフィスへの流入口で溶融体の流動状態が乱れることなどにより流速が不規則になったり、ポリマーの部分的な構造破壊によって生じると考えられる。
したがって流路に死角が多いとメルトフラクチャーという現象が起き易くなる。

解決策→

ダイ入口は直角を避けテーパーを付けること。あるいは末広がり部分をもつダイ構造とすることも一案。

④サージング-脈動- (surging)

材料の送り出しが円滑ではなくサージ(大波)のように脈動し、製品の形状や寸法に周期的なムラが発生する。
これをサージングと言い、発生原因は以下のように考えられる。

a)負荷に因るサージング現象
スクリューの1回転の間の負荷の変動。ペレットの食い込み、ホッパー、スクリュー設計などの不適切などに因り生ずるものでスクリューの回転数と相関関係がありサージングの大きさも一定の形でおこる。
ブレーカープレートのない場合も起こりやすい。

b)押出機のフィードゾーンでの材料の軟化点の不安定に起因
スクリューの設計や、材料の溶融物性、滑性などの不適切性により起こる。

c)バレルやダイの温度の調節不良
比較的長いサイクルで起こり、溶融温度が変動し圧力が変化する。
特にパウダー成形の場合ホッパー部のシリンダーが過冷されると起こりやすい。

d)混錬不十分のため、溶融温度や押出圧力が急激に変化する場合

解決策→

押出機のヘッド圧を上昇させると改善できる。
均一ブレンドとL/D(有効長)の長いスクリュー(L/D28~30)を使用することと適切な温度コントロールが必要。

⑤プレートアウト (plate out)

ブレーカープレートの中心部からダイにかけて安定剤、滑剤、着色剤などの一部、またはそれらの酸化、分解、化合などによる生成物が付着する現象。

a)発生の要因

  1. 安定剤、滑剤、着色剤などPVCとの相溶性の少ないものは樹脂から追い出され金属面に付着する。
  2. 一般に極性物質は金属に付着しやすい。金属石鹸はその一つで金属表面とは極性端で結びつきやすい。
  3. 電気陽性度の強いBaが最も強く、次にCaがプレートアウトを生じやすくCd、Zn、のように陽性度の低いものはプレートアウトの傾向が少ない。
  4. 材料に水分を含んでいるとプレートアウトし易い。

解決策→

  1. Ba-Zn系の安定剤ではBaの比率を小さくする。
  2. Baの多いCa-Ba系安定剤では、極性の少ないZnを少量添加すると良い。
  3. 有機錫系安定剤を少量添加すると良い。
  4. 懸濁重合樹脂に乳化重合樹脂をブレンドして使用すると好結果が得られる。
  5. 材料をよく乾燥させる。

⑥目ヤニ

バレル、ダイ内面にレジンの熱劣化物が目ヤニのように付着し、加工中にダイ出口に流出固着し、製品の表面を傷つけたり、条をつけるなど厄介なトラブルを起こすことがある。
この原因はまだ明らかにされていないが前述のプレートアウトが大きな原因の一つであると考えられる。
さらに金属とレジンとの接触面の境界膜が加熱により熱劣化して流動性を失い、次第に金属表面に蓄積していくためである。

解決策→

樹脂圧力をダイ先端部にかけること、材料をよく乾燥させることも1つである。

⑦ブルーム (bloom)、ブリード (bleed)

表面に、その主成分であるポリマーとは異質の配合物質が浸出してくる現象をいう。
浸み出し、吹く、泣きとも言われており、プラスチックの表面性改良において嫌われる。
PVCの場合、相溶性の小さい二次可塑剤を多量に使用したり、軟質配合に有機錫マレートを使用した場合、あるいは脂肪酸アミド系の滑剤を多量に使用した場合はこの傾向が著しい。

解決策→

混錬したシートを60℃の温水中に浸漬し、15~20時間で現象が無いかを確認する。
極端な場合、数時間内にはブルームの減少が現れる。

⑧マイグレーション (migration)

ゴムや可塑化プラスチックでは配合された可塑剤、着色剤、老化防止剤、硫黄などが、同一配合物内、または相接する2つの配合物間で高濃度の方から低濃度の方へと移動することをいい、移行性ともいう。
プラスチックフィルムを食品包装として使用する場合、配合剤のマイグレーションは衛生上重要である。
また軟質PVCとポリスチレンとの間の可塑剤の移行は有名である。

活性の弱い化学的に安定のポリマー(ポリエチレンなど)に対しては移行性が少ないが、表面活性の強い物質(配合ゴム、セルロイド)に対しては移行性が強い。硬質PVCに対しては重合度が高くなるほど移行性が少なくなり、反対にPVCのコーポリマーに対しては非常によく移行する。
軟質PVCにおけるDOPと高分子可塑剤の移行を比較すれば高分子可塑剤がはるかに移行性は少ない。

Ⅱ.ポリエチレン樹脂の成型不良対策

①パイプと異形品の不良現象と対策

a)タテ方向に線が入る

  1. ダイリップが汚れているかダイの中にレジンが滞留している
  2. サイジングダイの内面にキズがある
  3. ウエルドラインがついている

b)表面のざらつき

  1. フィッシュアイか汚染のため
  2. 冷却水に因るアバタ傷である。(サイジングダイで冷却水が沸騰する)
  3. 気泡のためのアバタ傷がついた。
  4. 樹脂が冷たすぎる
  5. 含有水分による
  6. 原料の選定不適当(M.I.に注意)

c)直径またはサイズが変化する

  1. サージング現象を起こしている
  2. 引取速度が一様でない
  3. サイジングダイの冷却が不完全

Ⅲ.PVCの成型不良対策

①PVCの不良現象と対策

a)表面のざらつき

  1. ダイの加熱不十分
  2. ダイ全体の長さが短い(ダイランドが短い)
  3. 原料の滑性の不足
  4. 押出速度が速い
  5. 原料が吸湿している
  6. ダイ面がプレートアウトしている

b)多孔質になる

  1. コンパウンドを加熱している
  2. 空気または揮発分が混入している
  3. スクリューの圧縮比が少ない(粉末押出の場合)

c)製品の歪みが著しい

  1. 低温押出で引落率が大きすぎる
  2. 冷却水の温度が低すぎる
  3. 製品が均一に冷却されていない

d)製品に波打ちがみられる

  1. ホッパーへの供給方法が不適切
  2. 背圧が不足している
  3. スクリューの冷却が不十分
  4. ペレット形状が不均一
  5. 温度調節器の感度不良

②硬質PVCパイプ及び異形品の不良現象と対策

a)肉厚の不同

  1. ダイのスリットとランドの取り方が間違っている
  2. ダイの樹脂導入口の設計不良
  3. 温度調節器の感度不良
  4. 樹脂中の滑剤が多すぎる

b)偏肉ができる

  1. 芯合わせの不完全
  2. ヒーターの加熱の不均一
  3. ホーミング法などでダイが部分的に冷却され、樹脂の流れが変わった

c)表面に光沢が無い

  1. ダイの加熱不十分
  2. ダイ全体の長さが短い
  3. 原料の滑性の不足
  4. ダイ内面がプレートアウトしている
  5. 押出速度が早すぎる
  6. 原料が吸湿している

d)表面が平滑にならず凸凹している

  1. 滑剤、または金属石鹸の配合量が多すぎる
  2. 原料の練り不足、または混錬の不均一
  3. ダイ設計の不良
  4. シリンダー内の内圧不足
  5. 押出機の温度が不均一
  6. 硬度差のあるペレットの混入

e)表面のざらつき

  1. 滑剤の不足
  2. ダイ内面がプレートアウトしている
  3. ダイの温度が不足している
  4. 安定剤の不足と加熱による表面分解

f)製品に異物・ゴミがある

  1. 他のペレットが混入している
  2. ゴミまたは分解物が出ている
  3. ブレーカープレートの金網が破損している

g)表面に線状に異物が出る

  1. 安定剤、顔料の混錬不足
  2. 充填剤の分散不良
  3. スパイダーマークの発生

h)製品に気泡が出る

  1. シリンダーの温度が高すぎて配合物が分解されガスが発生
  2. ペレットに気泡が入っている
  3. ペレットが吸湿している

i)製品の物理強度の低下

  1. 原料の混錬不足
  2. 押出加工時の内圧不足
  3. 配合順序の間違い
  4. スパイダーマークが出ている
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