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プラスチックの生産量と使用量は世界的に増加の一途をたどっています。2020年の世界プラスチック生産量は3億6700万トンでしたが、2040年にはその生産量が倍増すると予想されています。同時に膨大な量にのぼる廃棄プラスチックをどう処理するかも重要な課題です。
そのような状況の中、生分解性プラスチックは廃棄プラスチック問題の解決や脱炭素社会の実現に役立つ樹脂素材として注目されています。今回は生分解性プラスチックの基本情報、種類や特性をわかりやすく解説し、成形方法や用途、注目されている理由、生分解性プラスチックの現状の課題と今後について解説します。
生分解性プラスチックは、バイオマスプラスチックと合わせて「バイオプラスチック」とも呼ばれます。バイオマスプラスチックは製造原料の種類で規定されるのに対し、生分解性プラスチックは使用後の機能性に着目したプラスチックです。
生分解性プラスチックは、通常のプラスチックと比較してどのような特性があるのでしょうか。ここでは、生分解性プラスチックの素材特性について説明します。
生分解性プラスチックは熱可塑性樹脂であるため、溶解させることで成形が可能です。主に押出成形や射出成形で生分解性プラスチックの加工をおこないます。
日本バイオプラスチック協会では、生分解性プラスチック製品を用途別に分類しています。ここでは、その分類を元にして「回収・再利用がしにくい用途やコンポスト化が可能な用途」「屋外や特定環境での用途」「特殊な機能性を生かした用途」に分けて紹介します。
近年、「海洋ごみ」が世界的な問題となっています。そのほとんどがプラスチックごみです。プラスチックごみは直径100μmから1μmほどの「マイクロプラスチック」になり、生態系に悪影響を与えるといわれています。
マイクロプラスチックは海水中の発がん性物質である「ポリ塩化ビフェニル」や、神経毒性を持つ「有機リン化合物」を吸着します。これらの化学物質を高濃度で吸着したマイクロプラスチックが食物連鎖の過程でさらに濃縮されていくのです。結果として、私たちの健康にもリスクが生じます。
生分解性プラスチックは微生物の働きで低分子化合物に分解されます。コンポストや土中に埋めることでプラスチックごみの処理が可能で、やがては水と二酸化炭素に戻って自然に還る素材です。もし回収・処理ができないことがあっても、生分解性プラスチックは陸上で分解されやすく、河川や風雨で海へ流出してマイクロプラスチック化する可能性が大きく下がります。
また、世界的に見ればプラスチックごみのリサイクル率は不十分で、特に途上国では多くが焼却処分されています。プラスチックの生産量は年々増加しており、焼却による二酸化炭素の排出量をどう抑えるかも国際的な課題です。脱炭素社会を目指す上では、植物由来の生分解性プラスチックに移行して石油資源の使用を減らすのは有効な方法といえるでしょう。
生分解性プラスチックの利用が広がれば「生態系に与える悪影響の抑制」「脱炭素社会の進展」が期待されるため、さまざまな分野・業界で注目されているのです
生分解性プラスチックは微生物の働きによって分解されるメカニズムを持つのが最大の特徴でありメリットですが、これは従来のプラスチックに比べて物性が安定しないというデメリットにもなりえます。屋外の使用で想定よりも早く分解が起こり、極端に耐久性が落ちてしまうのなら実用的ではありません。
さらに、まだ生分解性プラスチックのコストが高いのも現状の課題の1つです。例えば、汎用プラスチックである高密度ポリエチレン(HDPE)の輸入価格は1kgあたり約162円(2022年1~3月の財務省貿易統計)であるのに対して、同時期におけるポリ乳酸(PLA)の輸入価格は1kgあたり369円程度です。プラスチックの種類によって変わりますが、材料コストが2~3倍前後はかかってしまうと考えてよいでしょう。
生分解性プラスチックは種類や環境によって生分解性が異なります。ポリ乳酸はコンポストでなければ十分に分解されませんが、カネカ生分解性ポリマー(PHBH)は水環境でも分解します。用途や環境に合わせて適切な素材を使用することや廃棄時の分別をおこなうことが重要です。
プラスチックのリサイクルが進んでいる日本では、汎用プラスチックの大部分が短期間で生分解性プラスチックに置き換わる可能性は高くないかもしれません。しかし、長期的な視点でいえば、技術革新や国際ルール、各国の規制や政策によって徐々に普及していくことも予想されます。バイオプラスチック市場の2021~2027年におけるCAGR(年平均成長率)が11%以上になるという予測もあり、生分解性プラスチックが今後も注目される樹脂素材の1つであるのは間違いないでしょう。
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